特許翻訳
特許翻訳とは何か?
発行日 : 2022.01.25

いまやインターネットとIT技術の発展とともに世界が一つの地球村となってきたため、「コミュニケーション」の役割はいつにも増して重要になっており、我々現代の人々は所謂「コミュニケーションの時代」を生きているといっても過言ではありません。

 

そのため、コミュニケーションの特殊な形である「翻訳」の人気は上がる一方です。学界では翻訳関連の科目が開設され、一部の特殊大学院では翻訳学という博士課程が開設されております。インターネットや町で翻訳会社をみかけることも多くなりましたし、書店にいくと尚更、様々な言語で出版された翻訳書を入手することができます。

 

翻訳とは、一つの言語で書かれた文章をもう一つの言語に写すことを意味します。種類によって、文学翻訳(若しくは出版翻訳)、映像翻訳、技術翻訳、行政文書(ビジネス文書)翻訳、法政翻訳、古典翻訳、特許翻訳など幾つかに細分化することができます。

 

最近では、翻訳資格が企業の採用の必須条件の一つにされることも多くなっております。

 

中国の翻訳資格試験は、中国教育部と北京外国語大学が共同で実施する「全国外国語翻訳証明書試験」」(英語のみ)と中国人事部主催の「翻訳専門資格(レベル)試験」の2種類があります。後者の場合、英語、日本語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、アラビア語などの言語に対して、四つのレベルが設定されております。

 

翻訳のなかでも特許翻訳、IP翻訳は一般の方々にはあまりなじみのない用語であると思います。簡単にいえば、IPとは知的財産権(Intellectual Property)を意味する用語であり、一番上位の概念にあたります。特許はIPに含まれる、IPよりは範囲の狭い、下位概念であると理解すればいいでしょう。ちなみに、知的財産権は、特許権、商標権、著作権など複数の種類に分けます。

 

中国の場合、専利法は「発明専利権」、「実用新型専利権」、「外観設計専利権」など三つの種類に分けられており、それぞれ日本の「発明創造」「実用新案」「意匠」に対応します。

 

それでは、特許定義、特許制度、特許翻訳などについて簡単にみてみたいと思います。

 

1. 特許の定義

 

特許は英語でPatentといいます。中国語では「専利」と書き、「専利権」の略称であります。

 

Patentの語源と特許について、中国知的財産局の公式ホームページには下記のように記載されております。

 

「専利」についての定義は、中国ではまだ統一されてなく、特許教材における一般的な定義によると、「専利」とは「専利権」の略称であり、特許庁が発明の出願に基づいて発行する文書であり、発明の内容を説明し、法的状態を生じさせるのである。特許権を取得した発明は通常、特許所有者の許可を得てのみ利用(製造、使用、販売、輸入などを含む)することができる。特許の保護は、時間と地理的な制限に影響される。中国の専利法は特許を、発明、実用新型、外観設計などの三つの種類にわけている。

 

出典:中国知的財産局ホームページ

 

2. 特許制度

 

特許制度は法律、行政と経済的手段を利用して発明や創造物の特許権を保護し、人々の発明創造活動を促し、科学技術の進歩と革新を促進し、発明創造の応用と普及、経済発展を促進する知的財産権保護制度であります。中国では1984年に、「中華人民共和国専利法」を公布しております。

 

出典:中国知的財産局ホームページ

 

3. 特許翻訳

 

特許翻訳とは、特許関連、或いは知的財産分野の文書を外国語或いは自国語に訳し移すことを指します。

 

特許翻訳を含める知的財産翻訳は、特許出願書類はもちろんのこと、特許庁と出願者、代理弁理士などの間でやりとりされる例えば、拒絶理由通知書、手続補正書、意見書などを含む様々な文書、無効審判請求書、判決書などを含む無効化に関する文書のほか、知的財産権に関する技術文献や論文、報告書なども対象になります。

 

参考:韓英特許翻訳の品質評価基準及び規範に関する研究、チェ·ヒョウン、翻訳学研究、2016年第17巻2号、217ページ

 

特許翻訳の場合、一般の翻訳文書に比べて専門用語が多く難易度が高いため、論理的に意味を伝えるためには、母国語と外国語の能力はもちろんのこと、特許法律を含める法的知識と理解力、論理的思考力、技術文献などを含める理工系知識に対する理解力なども必要になってきます。