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PCT国際出願翻訳文の誤訳における中国特許関連制度について
発行日 : 2022.11.18

 

中国語翻訳文における法律規定のお問い合わせが増えてきていますが、「中国特許法実施細則」、「中国特許審査指南」及び「中国特許審査運営規定」などに記載されているPCT中国語翻訳文に関する法律規定をまとめてみました。

  

1. 「中国特許法実施細則」


第百十三条 出願人は、提出した明細書、特許請求の範囲または図面中文字の中国語訳文にミスがあることを発見した場合、次に規定される期限内で最初の国際出願書類に基づいて訂正することができる。

(一)国務院特許行政部門が発明特許出願の公開或いは実用新案特許権の公告に関する準備作業を完了する前

(二)国務院特許行政部門が発行した発明特許出願が実体審査プロセスに入ったという通知書の受領日より 3 か月以内出願人は国務院特許行政部門よりの通知書の要求に基づいて訳文を訂正する場合、指定期限内で本条第二項に規定された手続きを行わなければならない。期限が満了になっても規定手続きを行っていない場合、同出願が取り下げられたものとみなす。

 

第百十七条 国際出願に基づいて付与された特許権において、訳文の誤りによって、 専利法第五十九条の規定に基づいて確定した保護範囲が国際出願の原文が示す範 囲を超えた場合、原文によって制限された後の保護範囲に準じる。保護範囲が国際出 願の原文が示す範囲より狭くなった場合は、権利付与時の保護範囲に準じる。

 

2. 「中国特許審査指南」

 

5.8 訳文の誤りの補正

特許協力条約の規定によると、国際出願は個々の指定国において国際出願日より正式な国内出願の効力を有するものである。そのため、国際事務局から指定官庁や選択官庁に伝送される国際出願は、法的効力を有する書類である。当該書面を根拠にして、国内段階移行時に提出された訳文に誤りがあることを発覚した場合に、専利法実施細則113条の規定を満たすことを前提に、訳文の誤り補正を認める。 訳文の誤りとは、訳文の書面を国際事務局から伝送された原文の書面と比べて、個別の用語、個別のセンテンス、或は個別の段落に漏れや間違いがあることを指す。訳文の書面は国際事務局から伝送された原文の書面と明らかに一致しない場合は、訳文の誤りの補正方式による更正は認めない。 出願人は、専利局による発明専利出願の公開又は実用新案専利権の公告のための準備作業が完了する前に、訳文の誤り補正手続を取ることができる。

出願人が訳文の誤り補正時に、補正頁を提出する以外、書面による訳文誤り補正請求を提出し、所定の訳文誤り補正手数料を納付しなければならない。規定に合致しない場合、審査官は未提出とみなす通知書を発行しなければならない。 訳文の補正頁は、最初の訳文の対応した頁と相互に差し替え可能なものでなければならない。つまり、差し替え後の前後頁の内容と相互に繋いでいるものでなければならない。 もし、一致しない箇所は数式や化学式など言語でない部分である場合、訳文の誤りの補正として処理せず、出願人に補正するよう要求する。

 

3.3 最初に提出された国際出願書類の法的効力

外国語で公開された国際出願について、その中国語訳文を対象に実体審査を行い、一般的には原文を照合する必要がない。ただし、元提出された国際出願書類が法的効力を有し、出願書類の補正の根拠とする。 国際出願について、専利法33条でいう元説明書と権利要求書とは、元提出された国際出願の権利要求書、説明書及びその添付図面を意味する。

 

3.「中国特許審査運営規定」

 

4.4.1訳文の誤り

中国語訳文と原文の明らかな不一致は訳文の誤りに属さない。 … よくある「中国語翻訳文が原文と明らかに一致しない場合」には、(1)翻訳文の内容が原文と関連ない場合、(2)翻訳文の長さが原文と異なる場合、(3)翻訳文と原文の内容が類似する技術方案を含んでいるが、翻訳文の全文または大部分(明細書全文など)が原文と異なる場合。...審査で誤訳と用語の不規範二つの場合を区分しなければならず、特許法施行規則第17条第3項及び第113条の適用に注意を傾けなければならない。

 

4.4.2誤訳訂正提案

 実体審査過程で出願人が自発的に誤訳訂正を申請することを許容しないが、審査官は出願人が提出した誤訳訂正が審査に役立つと判断する場合、誤訳訂正要請を受諾し該当審査を遂行することもできる。

 

4.4.4承認されたテキストの誤訳

 すでに承認されたテキストに実際に誤訳がある可能性はあるが、これに対し審査官は翻訳の誤りを避けるために原文を確認する必要はない。

 

 

作成:Panwords