特許翻訳
特許無効審判における「翻訳異議の申立て」について
発行日 : 2022.10.21

特許無効審判では請求人が外国語の証拠を提出する際には、必ず中国語翻訳文を提出するべきです。また特許権者は、提出した翻訳文の正確性に対して異議を申し立てることができますが、このような「翻訳異議提起」は尋問手続きの一つとみなされます。

 

しかし、回答時間が制限されているため、特許権者は無効審判の請求人が提出した無効事由と証拠の技術的な内容、または法律的な内容を重視する傾向があり、翻訳文に対する検討を怠ることが多いです。多数の事例を見てわかるように、翻訳異議申立ては事件の方向を決定することもあるように、十分な重要な役割を果たすこともあります。

 

翻訳の異議については以下にてさらに詳しく見ていきます。

 

1. 「中国特許法施行細則」及び「中国特許審査指針」における翻訳異議申立てに関する規定

 

「中国特許法施行規則」第31項:

特許法及び本細則に基づいて提出する各種の書類は中国語を使用しなければならない。

 

「中国特許審査指針」第4部第8章第2.2.1節:(外国語証拠の提出)

当事者が外国語の証拠を提出する場合、中国語訳文を提出しなければならない。挙証期間以内に中国語訳文を提出していない場合、当該外国語の証拠は提出していないものと見なす。

 

 

相手当事者が中国語訳文の内容に対して異議がある場合は、指定の期限までに異議を持っている部分について中国語訳文を提出しなければならない。中国語訳文を提出していない場合、異議がないものと見なす。

 

中国語翻訳に対する異議があるとき、

1)当事者双方は異議が持たれた部分について合意となったならば、双方で最終的に認めた中国語訳文を基準とする。

2)当事者双方は異議が持たれた部分について合意になっていない場合、必要な際には、特許復審委員会は翻訳を委託してよいとする。

 

a.当事者双方が翻訳の委託について合意となった場合、特許復審委員会は当事者双方が認めた翻訳機関に全文又は使用対象部分、或いは異議が持たれた部分の翻訳を委託してよいとする。

b.当事者双方が翻訳の委託について合意になっていない場合、特許復審委員会は自ら翻訳専門機関に翻訳を委託してよいとする。翻訳の委託に必要な費用は、当事者双方が各々50%を負担する。翻訳費用の支払を拒否する場合、相手当事者が提出した中国語訳文が正確であることを認めたものと見なす。

 

2. 翻訳文の異議手続に対する解釈

 1) 翻訳文異議の申立て時期:

「中国特許審査指針」の規定によると、翻訳異議の提起時期というのは指定された期間や法律的に規定された期間ではありません。ただし、実際無効受付通知書または文書伝達通知書を受け取ってから1ヶ月以内を、上記通知書に回答する期限と指定することが多いです。

 

しかし、上記の期限内に誤訳が見つからない場合、他に救済できる時期はあるのでしょうか。

 

ご存知のように、無効審判請求人は無効審判請求を提出してから1ヶ月以内に証拠と理由を補充することができます。したがって、これらの補足証拠と理由が特許権者に伝達された後、特許権者は回答のために新しい指定期間を得ることができます。実際、この期間中、最初の無効受理通知書についてまだコメントを発表することができるので、翻訳に対する異議も提出することができます。

 

しかし、すべての無効審判請求人が証拠と理由を補完するわけではないので、必ずしも2番目の機会があるわけではありません。

 

2) 翻訳文異議の申立て方法と注意事項

 

「中国特許審査指針」には翻訳文異議の申立て方法に関して詳しく規定したものはありませんが、回答文書に翻訳異議申立てを言及することと、翻訳異議申立て文書を別途提出すること、二つの方法が可能です。

 

翻訳異議を申し立てる際には、以下の注意事項に気を付けるべきです

 

一つは、無効審判での翻訳異議申し立ては必ずしも実質的であり、事件の流れに影響を及ぼす誤訳のみを指摘し、タイピングミスなど翻訳文のすべての誤訳を指摘する必要はありません。

 

二つは、相手当事者が提出した書類に存在するすべての翻訳文を検討しなければなりません。 「中国特許審査指針」には翻訳文を書面により提出する方法についての規定はないため、相手当事者が提出した翻訳文は証拠翻訳文書に記載されているだけでなく、無効請求または補足理由に対する意見陳述書に隠されて証拠に引用する方法で記載されている場合もあります。このような翻訳文は見落とされることが多く、詳細な検査ができない場合があるため、必ずすべての翻訳文について詳細な検討が必要です。

 

三つは、翻訳文の異議を申し立てる際には、相手当事者の翻訳が間違っていることを指摘するだけでなく、正しい翻訳文も一緒に提出しなければならない。

 

四つは、翻訳文について検討する際は、必ず専門翻訳会社の助けを借りて詳細に検討する必要があります。

 

五つに、翻訳文の誤りが明確でない場合、すなわち原文の用語自体の意味が多様であるか曖昧である場合、翻訳の異議申し立ての信頼性を高めるためには、誤りの理由を十分に説明し、証拠提出を考慮する必要があります。

 

このように無効審判で翻訳異議提起の重要性と注意点について見てみました。翻訳異議申立ては無効事件の焦点の一つであり、最終的には特許権の維持に影響を与える可能性もあるため、翻訳異議は決して無視されてはいけません。最後に、もう一度翻訳文の正確性について重視することを強調したいと思います。

 

編集・作成:Panwords